水島あやめの脚本作品で現存しているのは3作。その1作が「明け行く空」である。昭和4年5月に浅草帝国館で公開された「母もの」で、6巻(約60分)のサイレント。
この時代のフィルムの現存数はきわめて少ない。そうした中でほぼ完全な形で残っているのだから奇跡的で貴重な作品といえる。
原作は雑誌「少女サロン」の懸賞で当選した新井睦子の小説で、水島がシナリオを担当した。夫が亡くなり離縁された母と、義父のもとに残された娘の再会と別れを描いたもので、子を思う母と母を慕い求める娘を主人公とした作品である。
〔製作スタッフ〕
原作………新井 睦子
脚色………水島あやめ
監督………斎藤寅次郎
撮影………武富 義雄
〔配役〕
恭子………川田 芳子
玲子………高尾 光子
純造………河村 黎吉
好一………小藤田正一
その母……二葉かほる
英夫………久良形 眞
本田………河原 侃三
医者………坂本 武
村長………堺 一二
このとき水島は25歳。松竹蒲田脚本部に入って4年目で、日本女子大在学中の脚本家デビュー作「落葉の唄」から数えて20作目の公開作品であった。
2013.11.2