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「涙の笹舟」(コレクターによって新たに発見された作品)

☆水島あやめ作品・関連資料のコレクターによって、2024年に新たに発見された水島あやめの少女小説。

ジャンル:少女小説
刊行日:昭和24年12月20日
出版社:雲雀社
表紙・挿絵:山本貞

◆あらすじ:
主人公は、山合の小さな集落で暮らす中学二年の美津子(15歳)。ある日近所の矢部家に、東京から春恵(16歳)が療養にやって来る。美津子は家で飼っている山羊の乳を、毎朝届けるよう頼まれる。そんな日を重ねるにつれて、春恵に招かれ、一緒に本を読んだり、春恵のバイオリンを聞いたり、2人は次第に心が打ちとけて仲良くなる。しかし普段明るい春恵は、時おり急に沈み込んで、まるで蝋人形のように白い顔色で物思いに耽ることがある。若くてきれいな母にもわだかまりがあるようだ。美津子は不思議に感じながらも理由がわからない。立ち入って尋ねることもできない。ある日、庭を流れる小川で笹舟を流して遊んでいたときに、春恵は幼い時に母に抱かれて笹舟を流した記憶があると、しんみりと呟く…。やがて療養がひと月を超え、東京から来た母からそろそろ東京に帰ろうと言われる。春恵は、せっかく仲良くなった美津子と離れたくないと帰京を拒む。しかし母に強く説得され渋々受け入れる。母は十日後に迎えに来ると言って帰京する。その日以来、春恵はますますふさぎ込む。そんな春恵から美津子は、誰にも内緒で海辺に近い村に行きたいので一緒に行ってほしいと頼まれる。春恵と一緒にいられるのもあと数日。何かわけのありそうな春恵の様子に、美津子は一緒に行ってあげることにする。ところが、最寄りの駅に着くと春恵は、ここから先は自分一人で行くので、駅で待っていて欲しいという。数時間後、駅に戻ってきた春恵は、今までなかったくらいにげっそりとやつれ、心配する美知子にも何も話さない。そしてそれぞれの家に帰る…。翌朝、矢部家から「春恵が大変だ、すぐに来てほしい」という知らせが来る。美津子は慌てて駆け付ける。しかし春恵は回復することなく、そのまま息を引き取ってしまう。3通の遺書が残されていた。両親と療養の世話をしてくれたお婆さんと美津子宛てだった。自分宛ての長い遺書を読んだ美津子は、春恵の不可解な体の具合や海辺の町に行った理由、そして突然の別れの真相を知る。春恵の抱えていた深い悩みとは何だったのか…

◆解説:
少女小説としては衝撃的なラストシーン…春恵の突然の出来事に動揺する美津子…主人公の美津子と読者に投げかけた作者水島あやめの真意とは何か、考えさせられる作品だ。
これまで確認されていなかった水島あやめの少女小説。戦後、六日町時代に発刊された作品で、南魚沼市の蒐集家種村勉氏によって発見された。戦後の出版ブームの昭和24年に、水島あやめは7冊(本作を含めて)出版されていたことになる。昭和20年に疎開して10年間の六日町時代に、30冊近い少女小説と海外名作を著しており、人気作家だったことがわかる。今後も、水島作品が発掘される可能性を期待したい。

20260212