流産した『?』という作品

2014年11月28日 蒲田脚本部

水島あやめ原作脚本「母よ恋し」の公開から、およそ1ヶ月。「蒲田週報」大正15年6月20日号に、次のような予告記事が載る。

「  ?
 脚 色 水島あやめ
 監 督 島津保次郎
 撮 影 桑原 昂 」

主人公の男爵で仏国飛行家役を岩田祐吉が演じ、相手役に英百合子、他の配役も発表される。

「欧州戦争に飛行機を取り入れたもので岩田祐吉英百合子と『海は笑ふ』以来久方振りの顔合わせに先ず興味を注がれるであ(ろ)う。英の一人二役というのも面白い飛行機モーターボートをふんだんに使ふ處に今迄にない痛快な映画が出来上るであろう。題名はまだ極らない。暫く『?』と題して置く」

という一文が添えられ、「飛行機を使用しロケーションは銚子潮来信州浅間山日本アルプス富士等にて冒険撮影をなす豫定で準備用の為め目下セットにて撮影中」と撮影に入る。

リンドバーグが大西洋を飛行機で無着陸横断したのが、この翌年の昭和2年5月。飛行機が身近なものになりつつあったから、時宜を得たモチーフである。しかし、飛行機にモーターボート。銚子、信州浅間山、日本アルプス、富士山での冒険撮影—。あの「お坊ちゃん」に負けず劣らぬスケールの大きいストーリーである。果して、水島の発案であろうか。あくまで想像の域を出ないが、「お坊ちゃん」同様、城戸四郎のアイデアを、水島が脚本化するように指示されたのではなかろうか。城戸は水島を、大型の女性脚本家に育て上げようと考えていたのかもしれない。

結局この映画は日の目をみる事はなかった。完成したのか、途中で撮影中止になったのかさえ分からない。後年、水島は大学の機関紙の取材を受けたとき、「もう随分お書きになりましたでしょう」という質問に対して、「書くには書きましたが、映画になったのはほんの僅かです。後は皆お蔵の中、役者の都合やなにかで止めになるのが多いんです」と答えている。『?』も、そうした作品の一つだったことになる。

2014/11/28
no.185

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