この度、詳説「脚本家水島あやめ」シリーズ第4弾「松竹蒲田脚本部の時代(その三)」を発行しました。
水島あやめは、生涯で32本の原作・脚色を書きましたが、そのうち4本のフィルムが現存しており、今も鑑賞することができます。そのうちの3本がこの時期の作品です。
・「明け行く空」監督・斎藤寅次郎、主演・川田芳子、高尾光子、昭和4公開
・「親」監督・清水宏、主演・高尾光子、昭和4年公開
・「美しき愛」監督・西尾佳雄、主演・高尾光子、昭和六年公開
いずれも新派調系の作品ですが、経済不況など社会不安が高まっていた昭和初期の世相を反映しており、当時の庶民の暮らしや国の施策なども知ることができます。
蒲田脚本部で唯一人の女性脚本家だった水島あやめの作風がよくわかる作品で、同時期の水島作品や水島の直面した課題についても紹介しています。
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目 次
はじめに
第七章 蒲田映画の全盛期と水島あやめ
第一節 日本映画界と蒲田撮影所の一大転機
第二節 関東大震災と昭和モダンの町・蒲田
一、昭和初頭の松竹蒲田
二、モダンな町・蒲田と「蒲田行進曲」のメロディ
第三節 蒲田脚本部と水島あやめ
一、蒲田撮影所開所十年と監督・脚本家たちの作品
二、水島あやめの公開作品
第八章 フィルムが現存する水島映画「明け行く空」「親」「美しき愛」
第一節 昭和初期の社会情勢
第二節 御大典記念映画「明け行く空」(監督斎藤寅次郎、昭和四年)
一、監督斎藤寅次郎の初期作品と「明け行く空」の位置づけ
二、映画「明け行く空」の概要
三、映画「明け行く空」の全貌
(一)製作の狙いと内容
(二)製作の経緯
(三)公開、そして評判・評価
四、劇場プログラムから見える昭和初期の世相
五、〔考察〕フィルム現存作品「明け行く空」の歴史的な意義
(一)フィルムが現存する昭和初期の主な現代劇映画
(二)新派調系現代劇「明け行く空」が現代に伝えていること
第三節 簡易保険宣伝映画「親」(監督清水宏、昭和四年)
一、映画「親」の概要
二、監督清水宏の思い
三、大久保忠素・清水宏の共同監督作品か?
四、逓信省簡易保険局の宣伝映画
五、〔考察〕現存フィルム作品「親」がたどったルートと歴史的な意義
~日本で製作→満州国→ソ連・コズフィルモフォンド→日本帰還~
第四節 家畜保険宣伝映画「美しき愛」(監督西尾佳雄、昭和六年)
一、映画「美しき愛」の概要
二、水島は家畜保険をどう描いたか
三、互いに支え合う古き良き社会
四、教訓劇「美しき愛」と脚本家水島あやめの信条
五、名子役・高峰秀子のデビュー当時
六、〔考察〕フィルム現存作品「美しき愛」の歴史的な意義
~水島映画「美しき愛」と傾向映画「何が彼女をさうさせたか」の違い~
作品紹介
第九章 成瀬巳喜男と水島あやめのコンビ作品ほか
第一節 監督成瀬巳喜男の原点となった二作品
■少女もの「純情」(原作脚色・昭和五年二月十四日公開)
■少女もの「青空に泣く」(原作脚色・昭和七年三月十日公開)
第二節 そのほかの作品の紹介
■夫婦もの「現代奥様気質」(原作脚色・昭和五年二月一日公開)
■夫婦もの「モダン奥様」(原作脚色・昭和五年七月二十日公開)
作品紹介
第十章 トーキー化と脚本家 水島あやめの苦悩
第一節 トーキー化が映画界にもたらす変化
第二節 観客の変化に戸惑う脚本家たち ~ある日の脚本会議~
第三節 水島あやめの自問自答 ~突き付けられた課題~
第四節 昭和四年から七年の雑誌掲載記事
注記
あとがき
20241117