明け行く空

1929年 映画脚本・原作

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原作:新井睦子
脚本:水島あやめ
監督:斎藤寅次郎
撮影:武富義雄
製作:松竹蒲田撮影所

【配役】
恭子 川田芳子
玲子 高尾光子
純造 河村黎吉
好一 小藤田正一
その母 二葉かほる
英夫 久良形真
本田 河原侃三
医者 坂本武

ジャンル:母もの・少女もの、サイレント、6巻
封切日:昭和4年5月25日
封切館:浅草帝国館

【あらすじ】
銀行を経営する本田家に嫁いだ恭子は、若くして夫に先立たれ、義父純造の意向で、生まれたばかりの玲子を置いて家を出されてしまう。銀行は破綻し、湖畔の村で乗合馬車屋となった純造は、孫娘と二人で平和に暮らしていた。そして玲子は可憐な少女にと成長した。村の教会に夫人の牧師がやってくる。両親のない玲子は、母を求めるように協会を訪ねる。女牧師は、教会に遊びにやってくる少女の名は玲子といい、親のないことを知って驚き、懐かしさで胸がいっぱいになる。女牧師こそ、玲子の生みの母恭子であった。しかし、いまは神に仕える身となった恭子は、自分が母であると打ち明けることもできない。純造も玲子に真実を教えない。しかし、玲子は優しく接してくれる恭子に、母の面影を見て心から慕っていく…。思い悩み、深く神に祈った鏡子は、村を出て行く決心をするのだった…。

【解説】
斎藤寅次郎のナンセンス喜劇性と、あやめの生真面目さとが程よくミックスされた佳作。フィルムが現存している。
雑誌「少女の友」に連載された少女小説の映画化。監督した斎藤は、「所謂『少女物』という特殊な殻をかぶっているだけに、…映画化は至難」だが、「未熟な私は、この『明け行く空』を作った事に依ってかなり種々の事を学び得た」と語っている(帝国館ニュースNo11)。また、評論家岡村章は、「水島あやめの脚本に基く高尾光子主演映画と云えば、その商品価値も頷けるであろう。ここに幾分のセンチメントをナイーヴに穿き変え得れば、内容的にも高さを加え得て、情操的にも優れをみせ得たであろうと思う。とにかく高尾光子と共演者が織り出す気分が、一面、この作品の少女小説映画を助けて余りあると云える」(「キネマ旬報」昭和四年七月一日号)と評している。
(20201005)

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